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第1章企業はステークホルダーに誘因を提供する。誘因とは、企業がステークホルダーに与えるメリットである。企業は、株主には株価の値上がりや配当、顧客には製品・サービスの価値、従業員には賃金を誘因として提供する。一方、ステークホルダーは誘因に対応して企業に貢献をもたらす。株主はリスクマネーを、顧客は商品やサービスの購入の対価を、従業員は労働力を企業に提供する。このような誘因と貢献において、バーナード(C.I.Barnard)は『経営者の役割』の中で、その関係を以下のように表している。誘因 ≧ 貢献企業は大きな誘因をステークホルダーに提供することで、ステークホルダーからの貢献を獲得し、長期的に存続することができる。経済紙やビジネス誌などで、優良企業ランキングといった調査をよく目にする。アメリカならグーグル、日本ならトヨタ自動車(以下、トヨタ)といった、収益性・成長性・安定性などの経営指標が高い企業が優良企業と評価される。ただ、そうした数値は結果である。好ましい結果をもたらす「優良企業の条件は何か?」と問われると、明確な回答はなかなか見つからない。ここまで紹介したステークホルダーの議論からすると、優良企業に対して、ステークホルダーは、大きな誘因を得られると期待している。公的な独占企業は例外として、どの業界にも競争がある。競合他社との競争の中でステークホルダーがとりわけ自社に誘因を強く感じるのは、他社にはない何らかの価値があるということだろう。他社にはない価値には、高度な製品機能、圧倒的な低価格、行き届いたアフターサービス、生活における問題解決の提供など、さまざまなことが考えられる。他社にはない価値(誘因)をステークホルダーに提供でき、ステークホルダーにとってなくてはならない企業として存在できるかどうかが、企業に課せられた最大の課題である。そして、企業が他社にはない価値を提供していく上で、本テキストで学ぶ経営戦略は、重要な位置を占めているのである。(5)優良企業の条件17

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