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12●34財務情報は企業経営の羅針盤経験と勘からの脱却企業経営の実務に携わっている人の中には、経営判断には経験や勘が重要であるという人が少なからずいる。その必要性は疑う余地がないし、そのとおりというべき部分も確かにある。しかし、経験や勘を重視することには問題もある。経験による思い込みが少なからず生じるからである。今日では、「成功体験」がかえって邪魔になることも多々ある。社会が大きく変化したり、めまぐるしく変化したりする時代には、過去の経験よりも現在を的確にとらえることが必要なのである。それだけに、情報に基づく的確な意思決定や判断が重要となってくるのである。たとえばこれまでの長い間、住宅関連分野、家庭電器製品分野、自動車などが大きな産業分野を形成し、しかも長期にわたって、比較的順調に市場規模を拡大してきた。ところが、1990年代に入ってその成長が鈍化し、中にはマイナス成長という製品分野も出てきている。これに対し、これらの分野はわが国の主要な産業分野であることから、政府も企業もその需要回復に力を入れてきた。しかし、なかなか思うようにはいかない。これまでの経験によれば、一時的な不況はあってもいずれは景気が回復し、ある程度の成長が見込めるものと考えることができた。しかし、関連する情報(データ)を分析すると、世帯数の伸びに比例して成長してきた分野であることがわかる。世帯数の伸びが期待されなくなった今日では、この分野が以前のような成長分野となることは期待しにくい状況が理解できる。企業経営に情報が必要なことは明らかであるが、財務情報が必要な理由についても考えてみることにしよう。財務情報、とりわけ、マクロ的な会計情報は、企業経営の

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