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7(1)販売とマーケティングの活動の違い販売は、生産と消費の隔たりを解決するために、交換機能から発達したものである。「生産者から消費者への所有権の移転」の働きをもち、生産されたモノを売りさばくという意味をも含んでいる。言い換えれば、手持ちの商品をどれだけ多く売るか、どれだけ好条件で売るかということであり、セールス・トークなどの販売技術や価格に代表される販売条件が課題になる。英語では、「セリング」といい、広辞苑では「売りさばくこと」、大辞林では「商品を売ること」と示されている。つまり販売は、「売る」という一過性の行為が中心の活動で、利益の獲得や中長期的な活動はあまり意識されていない。一方、マーケティングは、「Market(市場)+ing」という表現からもわかるように、市場対応という概念である。顧客がもつニーズへの対応を起点とし、顧客が購入したくなる商品を創造することを目的としている。売る努力をしなくても、将来にわたって売れるしくみをつくる活動である。つまりマーケティングは、顧客満足を得ることによって、市場における自社の優位性を獲得するために行われる。機能・品質・量など顧客が満足する価値をもつ商品開発、顧客から信頼や好感をもたれるイメージ形成、顧客が好む方法での提供などの、活動すべてを包括する。したがって、顧客価値の創造が課題となる。(2)販売とマーケティングの概念の違い図表1−3にあるとおり、セリングは工場を出発点として、売上高増加による利益を目標としているのに対し、マーケティングは市場を出発点として、顧客満足による利益を目標としている。すなわち、マーケティングとは顧客のさまざまなニーズを探求し、顧客の満足すなわち価値の創造を図ることである。販売テクニックをどんなに駆使しても、顧客に満足を与える商品やサービスを創造することができなければ、どのような企業や組織であっても、やがては衰退し、消滅していくことであろう。そのため、マーケティングは、顧客満足すなわち新たなる価値を生み出すいろいろな機能を組み合わせたマーケティング・ミックスによる多面的な戦略であるともいえる。第1章 価値創造活動としてのマーケティング

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