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まです。ということは、こういうモノの均衡取引量は変わらず、価格だけが上昇する結果となります。 一方で、人気によらず生産者側の都合だけで価格が上下する場合もあります。例えば悪天候が続き野菜が不作になり、例年の数量を供給できない時、購入者側は価格が多少高くとも必要なので買わざるを得ません。この場合、グラフで言うと供給曲線が左側に移動し、需要曲線は変わらないため均衡価格は上昇し、均衡取引量は下落します。 ただし、価格上昇があまりに長い間続けば、さすがに野菜の人気も落ちるでしょう。野菜の代用としてビタミン剤を販売する業者や、天候に恵まれた海外の輸入野菜を多く仕入れる業者が増えるかもしれません。こうした競合商品に人気が向かえば、国内の野菜に対する需要曲線は左側に移動し、結果、均衡価格は元の水準に近づき、均衡取引量はさらに下がる、といった事態に陥りかねません。 人気に基づく経済。これが、私たちが生きる「市場経済」の姿なのです。日本経済入門012人気は合理的には決まらない この、経済の根幹とも言うべき「人気」は、とても厄介なものです。人気は、価格によって、時によって、場所によって、状況によって変わることは説明しましたが、ほかにも左右する要素があります。それは、「人間の心理」です。人気は、時にとてもいいかげんな要素で決まる、ということも、経済を理解する上で知っておいた方がよいでしょう。 テレビ番組でお馴染みの池上彰さんは、2014年春から愛知学院大学特任教授として経済学の講義を担当しています。その初回、「経済とは、そもそも何か」と題した講義で、池上さんは「人間はすべて合理的な行動を取るわけではない」と学生に伝えました。こういう内容です(ⅳ)。 うなぎ屋に行きました。1000円と2000円のうな重があります。どちらを選ぶか。講義を受けた学生の多くは1000円と答えました。ところが、3000円のうな重をメニューに追加したところ、多くの学生が2000円のうな重を選ぶと答えました。

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