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「フェルミ推定」 ステップアップ り巻く環境や潜在的に存在する要素などを包括的に捉え、問題の原因を探究してその対策を講じるとともに、対策を講じた結果がフィードバック・ループを通じて当初の原因にどのような結果をもたらすかをよく分析することが重要です。 マネジャーは、チームの問題を発見し、または問題に対する解決策を分析するにあたって、まずは仮説を立ててからそれを検証することが必要となる場面があります。 例えば、まだどの企業も販売していないような商品を開発しようとする場合には、その商品に対する需要がどの程度あるのか明確ではないことがあります。このような場合、市場調査の前段階で、まずは新商品の対象になると予想される潜在顧客がどの程度存在するかを概算で見積もることができれば便利です。 このように、実際に調査をすることが困難な数量を、仮説をもとに論理的に推論して概算する手法に「フェルミ推定」があります。「フェルミ推定」(Fermi estimate)とは、実際には特定や調査が困難な数や解答などを論理的に推論することで、イタリアの物理学者エンリコ・フェルミ(Enrico Fermi)に由来します。フェルミ推定は、理工学の分野などでは「オーダー・エスティメーション(order estimation)」と呼ばれることもあります。 「フェルミ推定」により求めたい概算値を論理的に求めるには、次の手順を踏みます。 ① 求めたい概算値を求めるために必要な条件を抽出します。 ② ①で抽出した各条件について数値を当てはめます。 ③ ②の数値を①の各条件に当てはめて結論を導きます。 以上の手順を経て、仮定としての概算数値を導き出します。 フェルミ推定によって得た数値は必ずしも正確な数値ではないかもしれません。しかし、時間をかけて検証しなければ確認できない結果について、簡便かつ論理的に概算値を得ることができるのであれば、新規の案件を検討するために置く仮説としては有力な資料となるでしょう。 このように、フェルミ推定は、新規の案件を検討する際などに、仮説を論理的に立てるのに利用できますが、概算値を求めるための条件を抽出する過程で、可能な限り客観性を担保することを心がける必要があります。希望的観測や欲しい結果を導くのに好都合な条件を抽出していないかという点には注意が必要です。 1-2 論理的な分析にあたっての基本的な考え方―MECE マーケットの動きや自社製品の顧客の消費動向、業務プロセスなどを分析しなければならない場面があります。その際、どんなに深く詳細に分析したとしても、全体としてみたときに必要な事項が抜け落ちているのでは正確な分析結果を得ることはできませ

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