B890・B9C0
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私は「これだ」と思いました。多くの研究者がすでに使った資料ではなく、新しい資料を使って研究ができる。しかも、およそ二千年もの間、人目に触れることのなかった第一級の一次資料です。私はそこで、『孫子』研究にギアを切り替えたわけです。『孫子』の魅力をここで一つお伝えするならば、何と言ってもそれは、「役に立つ古典だ」という点です。『孫子』を読むと、今日からでも自分を変えられる、明日からでも組織を変えられる、そんな気持ちになることができます。『論語』や『老子』にも効き目はあるのですが、それはじわじわと効いてくるもので、即効性という意味ではやはり『孫子』に軍配が上がります。『孫子』には、今すぐにでも私たちの仕事や人生に役立つような思想や言葉が、数多く書かれています。例えば、「拙せ速そ」という言葉を使い、「戦争が長引いていいことはない、戦争はできるだけ早く終わらせる方がよい」と説いています。私はこれを自分の仕事に引き付け、「仕事は早く終わらせる方がよい、締め切りは必ず守るようにする」という意味の座右の銘にしています。事実、今中国の書店に行くと、『孫子』はたいてい三つのコーナーに置かれています。一つは哲学や軍事思想の棚、もう一つは会社経営に関する本の棚、三つ目に処世術の棚です。つまり、古典研究を行う人だけでなく、現代の厳しいビジネスの世界に身を置く人や、人生に迷い指針を求めているような人も、『孫子』を手に取っているのです。人間と人間が戦うこと、軍隊を組織すること、組織を率いるリーダーになること……。戦つく6

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