B8C0・B8D0
2/8

主義が浸透しているはずの今日でも、残念ながらまだ本当の意味では実現できているとはいえません。今も多くの男性は女性を下に見ていますし、上司は部下よりも上だと思っています。子どもについては、今なお大人よりも下の立場にあると考えている人は多いです。二十一世紀に入った現代でさえそのような状況なのに、アドラーがすでに一九二〇年代に「一緒に仲良く暮らしたいのであれば、互いを対等の人格として扱わなければならない」(『人はなぜ神経症になるのか』)と主張していたことを考えると、彼こそはまさに時代の先駆者であったといえますし、時代はまだアドラーに追いついていないといっても間違いありません。すぐに見るように、アドラーは「あらゆる悩みは対人関係の悩みである」といっていますが、その対人関係の問題を解決するためにアドラーが提言している数々のことは、もしも人と人とが対等であるということの意味が真に理解されていなければ、かえって対人関係を損ねることにもなってしまいます。私が初めてアドラーの著書に触れたのは、結婚して第一子が生まれた三十代の頃でした。当時、私の家庭では妻が外で働いていたので、比較的時間を自由に使えた私がもっぱら子どもを保育園に送り迎えしていました。子どもは理想的に従順であるはずはなく、親の思い通りに行動しないので、思いがけず子どもとの日々は大変なものになりました。それで、どうすれば子どもとよい関係を築けるだろうかと精神科医の友人に相談した時に薦められたのが、アドラーの『子ども5

元のページ  ../index.html#2

このブックを見る