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*ユダヤ人ユダヤ人の母をもつか、ユダヤ教を信仰する者(ユダヤ教徒)。二世紀に原住地パレスチナを失って世界に〈離散〉した後も、ユダヤ人は各居住地で経典(タルムード)と教会堂(シナゴーグ)を中心とする宗教共同体を形成、民族としてのアイデンティティを維持した。*フロイトジグムント・フロイト、一八五六~一九三九。オーストリアの精神病理学者。ユダヤ人。心理現象の動因である「性欲」が抑圧されて「無意識層」に沈む過程に着目、自由連想法による神経症の治療法〈精神分析〉を創始した。著書『夢判断』『精神分析入門』他。アルフレッド・アドラーは一八七〇年、ウィーン近郊のルドルフスハイムで、ユダヤ人*家庭の七人きょうだいの第二子(兄一人、弟四人、妹一人)として生まれました。穀物商を営んでいた父親のレオポルトは、ユダヤ人に多くの権利を保障されたブルゲンラント州出身だったこともあり、経済状況は比較的裕福でした。幼い頃のアドラーは、父との関係は良好だったものの、母のパウリーネとの関係はあまりよくなかったようです。母が、自分よりも二歳年上の兄ジグムントのほうを可愛がっていたことや、弟が生まれると今度は弟に注目するようになったといったことが、ある伝記には書かれています。上と下にきょうだいがいる中間子の場合、生まれてしばらくは親の注目を浴びて育ちますが、第一子と違って親の関心や愛情を独占することはなく、弟や妹が生まれるとすぐに親の注目は弟、妹に移っていくことになります。こうした経験が背景にあって、アドラーの気持ちは母親から父親へと向かっていったと考えられます。後にこの自分の経験が、アドラーがフロイト*の「エディプス・コンプレックス*」を否定することになった一つの根拠になりました。自分の経験に照らして、男の子が父親を憎み、母親に惹かれるということは決して普遍的な事実ではないと考えたのです。 身体的ハンディキャップの影響11

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