通信研修総合ガイド2025
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3節人組織運営のための必須知識第1節 良好な職場内環境とは職場づくりと職場文化職場運営と組織論第3章第1章変革定常状態1 職場内環境づくりの重要性(1)「場の理論」集団において、その構成員である個人は、単独でいるときとは異なる行動を取る。社会心理学者のクルト・レヴィンが提唱した「場の理論」によると、個人の行動は、本人の特性と周囲の環境との相互作用によって決定されると考えられ、次のような関数式で表されている。●場の理論B=f(P, E) B(Behavior):行動 P(Personality):本人の特性 E(Environment):周囲の環境この式では、関数を表すfによって、BとP、Eとが相関関係にあることを示している。つまり、同じ人であっても環境が異なれば、行動が変わってくることが示唆されるのだ。例えば、結果を出せなかった野球選手が、別のチームに移籍したところ、生き生きとプレーをし、目覚ましい活躍をするようになることなどを目にすることもあるだろう。この式を企業活動に当てはめ、Bを、組織目的を達成するためのメンバーの行動と捉え直すと、Pは本人の意欲や能力、Eは本人を取り巻く環境、と考えることができる。この本人を取り巻く環境のうち、最も身近なのは職場内環境である。職場内環境には、メンバーが仕事をする上でのさまざまな与件が含まれる。オフィスのレイアウトや作業場所、温度や照明の適切な管理のほか、仕事の割り振り方や権限移譲、職場集団の価値観や行動様式・習慣なども含まれる。管理者は、職場メンバーのパフォーマンスの最大化を職責とする以上、メンバーの職場内環境を整えることが求められる。このように、能率を追求する組織には、ルーティン化するよう強い慣性が作用する。例えば、オンラインショップを運営している企業の場合、商品開発、販売戦略、情報システム、物流網といった企業内に大規模な仕組みや制度が構築され、相互に関係し合っている。それらはいったん構築されてしまえば、巨大な協働体系となり、物流網一つとっても変更することは容易ではなくなる。ただし、ここで注意したいのは、現状ではルーティン化されている業務であっても、必ず導入初期には試行錯誤を経ている点である。組織の変革とは、慣性をもたらす諸制度(組織構造や組織文化)を変革してまで環境へ適応しようという挑戦であり、次の定常状態に落ち着くまでは、一時的には調整コストの増加やリスクを伴う。変革を経て定常状態に落ち着いた先がルーティン化された状況である。このように、組織内の行動パターンは変化し続けている。(5)組織変革への取り組みやすさ企業の、組織変革への取り組みやすさは組織構造によるといえる。企業の全体的な組織構造は、機械的か有機的かに分類される。これ602061ルーティン21ここで学ぶこと営業1課の課長である工藤さんが、営業2課長の田島さんと話をしている。工藤:田島さんの営業2課は明るくて、みんなが言いたいことを言える雰囲気があっていいですね。1課は何となく暗くて、ミーティングの決定事項に、後で愚痴を言うようなところがあります。やっぱり、リーダー格の森田さんの、ネガティブな発言にメンバーが引っ張られているのでしょうかね。田島:森田さんは一緒に仕事をしたことがありますが、言うことの理屈は通っていると思いますよ。言い方に多少問題があるかもしれませんが。工藤:森田さんの発言に同調するメンバーもいますから、もしかするとメンバー構成に問題があるのかもしれません。田島:メンバーを変えたところで、工藤さんが望むような職場になるかどうかはわかりませんよ。職場文化は構成メンバーによって形づくられるかもしれないが、職場文化を変えていこうと思うのであれば、その主体は職場の長たる管理者となる。ここでは、職場文化をマネジメントするための着眼点について見ていこう。(3)管理者の役割組織における経営者、管理者の役割とは、組織の成立要件を満たし、協働体系が適切に機能するように、絶えず組織を維持することにある。そこにおける管理者の役割の一つは、組織の有効性と能率を念頭に置きながら、課業(タスク)に人を割り当てることである。課業とは、組織目標を達成するために分業された職場の仕事を、さらに個人が担うレベルまで細分化したものを指す。もう一つの管理者の役割は、調整である。むしろ、組織が構造を持つことによって生まれた、複数のメンバーを調整する役割の担い手が管理者といえる。調整は、組織の成立要件の一つであるコミュニケーションによって行われる。とはいえ、単にコミュニケーションを取ればよいというわけではなく、分業に基づく細分化の利益が、細分化された業務を統合するコストよりも大きくなることが必要である。調整の業務量が多く管理者の負担があまりに大きくなると、管理コストが過大で能率が悪いと判断される。その場合には、組織設計を見直す必要も出てくる。(4)ルーティン化の効用と弊害毎日同じ作業を行う方が、日々異なる作業に従事するよりも作業者の負荷は少なく、不測の事態の発生も抑えられる。通常、定常状態にある協働体系は、繰り返し同じ相互作用パターンを生み出し、諸活動がルーティン化するように働く。ルーティンとは、日々の生活や仕事において繰り返し行う一連の活動や習慣のことを指す。作業のルーティン化によって、より少ないインプットで同じアウトプットを生み出して調整コストを低減させることができ、能率的な組織運営ができる。主な対象者▲内定者・新人一般・中堅主任・係長課長部長MORE!仕事目標達成の管理と評価リーダーシップ管理者の役割とリーダーシップ組織として 職場を  捉える職場期待される成果の創出高いレジリエンス役割認識職場づくりとコミュニケーション人材の 活用と  育成人材のマネジメント 管理者のための労務知識管理者のための財務知識Renewalすることができます。●困難な状況に直面した場合に立ち返るべき、管理者としての基本的な指針として、実際の職場マネジメントで有用性を発揮します。●職場運営に欠かせない、労働法を中心とした労務管理や財務の基本知識を身につけます。ぞれを有機的に結びつけています。●労務管理や財務知識といった経営管理知識を、幅広く習得できます。●講師添削型リポートでは、習得した知識の確認だけではなく、実際に自分の置かれた状況にあてはめて考えることを期待します。教材構成A1L5受講期間6か月(在籍期間:12か月・標準学習時間:48時間)特色●「仕事」「人」「職場」をマネジメントの3つのテーマと位置づけ、それ<テキスト誌面イメージ>カリキュラム 2 のコースと共通の教材を使用1 管理者の役割とリーダーシップ①マネジメントの機能②管理者の基本的役割③環境変化がもたらす管理者の役割拡大④管理者のリーダーシップ2 目標の創造・達成・評価①「目標による管理」とマネジメント②職場目標の設定と共有③個人目標設定の支援④目標達成過程のマネジメント⑤成果と達成過程の評価⑥「目標による管理」の運用力向上3 人材のマネジメント①管理者と人材マネジメント②人材の活用③人材の育成④キャリア開発支援⑤実践的スキルの習得4 職場づくりとコミュニケーション①職場運営と組織論②組織構造の設計③職場づくりと職場文化④強靭な組織づくりとコミュニケーション5 管理者のための労務知識①管理者と労務管理②労働契約に伴う権利と義務③労働時間・休日・休暇④出産・育児・介護の制度⑤さまざまな労働者への対応⑥職場のメンタルヘルス対策6 管理者のための財務知識①マネジメントと会計②経営状況をつかむ③的確な計画と管理のために④効果的なコストマネジメント⑤応用力を養う(ケーススタディ)別冊管理者のためのコンプライアンスコンプライアンスの基礎知識と管理者の役割を分かりやすく解説しています。目標の創造・達成・評価特別受講料33,000円(一般受講料:38,500円)テキスト:6冊、別冊:1冊リポート種別・添削回数講師添削型(〒/Web):6回マネジメントの核となる、ベーシックな役割認識と経営管理知識を学ぶたとえ優れたプレーヤーであっても、管理者として登用された後自分なりの経験則のみでことを進めようとすれば、限界が来るでしょう。自らの能力を遺憾なく発揮するためには、まずは管理者としてベーシックな役割認識を身につけ、マネジメントに必要な知識を習得することが必要となります。また、管理者を継続的に育成し、支援していこうと考える企業においても、このコースの活用により自社の管理者の知識レベルを■えられることができ、今後の育成方針が立てやすくなるでしょう。ねらい●管理職に任用された場合に持つべき役割認識や知識を体系立てて習得60革新管理者【実践】(リニューアル版)

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